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東京の中心に位置し、江戸時代から続く浅草寺や雷門といった観光名所が集まる浅草。 その浅草寺の北側に位置する奥浅草に、靴を中心とした皮革産業が集まっていることをご存知でしょうか。「ベビー用レザーシューズ」は、そんな日本文化の伝統と技術が残る奥浅草で誕生しました。
アトリエの机の上に置かれた、小さくて可愛い手の平サイズのベビー用レザーシューズ。企画から制作までの全てを、DESIGN TABLE COMの代表である手島喬之さんが一人で手掛けています。 「ベビー用レザーシューズは、一生残せるファーストシューズです」と、手島さんは優しく穏やかな口調で語ってくれました。
手島さんの靴の企画制作会社では、普段は主に大人用の革靴を作っていますが、ベビー用レザーシューズはその高品質なレザーの残革を利用したワークショップから生まれました。初めはワークショップの中だけでベビー用レザーシューズを作っていましたが、「ファーストシューズやプレゼントにこの靴を買いたい」という声が多かったので、商品化されたとのこと。このベビーシューズは、そんなエコな活動が起点となっているのです。
手島さんは、常に「環境に配慮したものづくりを」というサステナブルな視点で商品開発に取り組んでいます。革は、地球に優しい「世界最古のサステナブル」な素材として、再び見直されてきているそうです。たしかに革製品は他の素材のものとは違い、バッグでも靴でも財布でもずっと長持ちしますよね。モノを使い捨てするのではなく、お気に入りのモノを大切に手入れしながら一生使い続けていく。そんな地球環境に優しい素材でできた商品を選ぶことは、子どもにとって最高の知育になるでしょう。
手島さんが一点一点、丹精込めて手縫いで仕上げるベビー用レザーシューズには、「子どもの足や肌に優しい靴を履いて、革の良さを感じてほしい」という願いが込められています。 市場に出回っている他のベビーシューズとの違いや魅力を手島さんにうかがうと、「上質な本革を使っているところです。今の子ども靴はほとんどが合皮でできていて通気性が悪いのですが、子どもの足は汗をかくし蒸れるので、合皮の靴は合わないのです」と教えていただきました。通気性に優れているのは、実は革靴の方だったのです。 さらに、このベビー用レザーシューズは「ベジタブルタンニン」という化学物質がほとんど使われていない、肌に優しいレザーで作られています。タンニンとは「木の樹液」のこと。植物由来の肌に触れても安全な素材なので、赤ちゃんの肌に優しい革靴を求めている方にもおすすめです。一般的なレザーの2〜3倍のコストがかかるそうですが、「革には妥協したくない」という手島さんの強い想いが感じられます。 歩き始めの感覚を損なわない、足の発育をサポートする身体に優しいデザインも魅力的。手島さんが木型から作り、いかに履きやすくなるかを考えて設計されています。柔らかくて耐久性のある革が、子どもの敏感な足を優しく包み込み、健やかな成長を促します。あえて靴底をつけていないので、ルームシューズのような感覚で履けるベビーシューズ。着脱する部分はゴム仕様で履きやすいデザインですので、お出かけのときも助かります。
それにしても、なぜ奥浅草に皮革産業が集中しているのでしょうか? その理由について手島さんにうかがってみたところ、「やはり隅田川があることが大きな理由です。革をなめすときは、大量の水が必要なんです」と教えていただきました。 浅草は江戸時代から続く伝統的な皮革産業の地域です。隅田川に近く、水を利用した皮の洗浄や染色が容易だったため、川沿いに皮革産業が発展しました。特に奥浅草では靴が盛んで、浅草橋の方ではバッグやベルトなど革小物が盛んだそうです。 長い歴史を持つ職人たちが多く、技術や知識が世代を超えて受け継がれています。そのため皮革産業に関わる加工業者や道具屋が、この地域に集中しているのです。材料の調達や商品の製造が効率的に行えるので、さらに多くの職人や工房を引き寄せ現在の形になりました。 また、江戸時代に最も栄えていた日本橋から近いことも、浅草の皮革産業が発展した要因のひとつです。昔はトラック輸送ではなく川を使っていたので、隅田川の存在は大変重要で、地域経済に大きく寄与していたのです。 日本の伝統文化や工芸が息づき、革製品の製造において高い技術力を持つ職人が多く存在する浅草。しかし「現在は職人の後継者が減ってきている」と手島さんは語ります。この日本の素晴らしい技術を後世に残していくことは、今後の重要な課題となるでしょう。
商品企画から完成までの全工程を手島さんが手掛けているベビー用レザーシューズ。原案は実は手島さんの師匠でしたが、手島さんが「自分の子どもに履かせたい」と思い、現在のプロダクトを考案しました。子どものことを真剣に想い、一から設計したベビーシューズですので、愛情溢れる温かな雰囲気が作品から伝わってきます。 「革靴は硬いというイメージがあるじゃないですか。そういうものではない靴をやりたかったのです」と語る手島さん。ビジネスシューズやドレスシューズはコロナ後の今の時代には合わないので、「革であっても、いかに楽に履ける靴を作るか」ということを課題にされています。 制作の過程でもっとも苦労した点を手島さんに尋ねたところ、「木型ですね。子どもの足の形は独特ですので」とおっしゃって、木型を持ってきていただきました。木型とは、靴のフォルムを形作る土台のことで、靴づくりには欠かせません。まず初めに手島さんが木を削って、木型屋さんでプラスチックにして出来上がるそうで、これだけでも大変手間がかかっています。
靴作りの最初の工程は、この木型の制作です。最終的な靴の履き心地や形の美しさはこの木型にかかっているので、慎重に行われます。次に、木型に沿ってパターン(型紙)を作成します。型紙ができたら革を裁断し、縫い合わせて靴の上半分にあたるアッパー(足の甲の部分)を作ります。アッパーが出来上がったら、木型に合わせて革を伸ばし靴の形を作っていく「吊り込み」という作業を行います。そして底面に本底を貼り付ける「底付け」を行い、木型から靴を外し、仕上げで見栄えを美しく整えたら完成です。 この一連の作業を、通常は工場などで機械を使って行うのですが、手島さんは全て一人で手作業で作りあげていきます。革靴づくりは、師匠が全て手取り足取り教えてくれるわけではありません。師匠の背中を見ながら長い時間をかけて習得して身につけた技術と、ものづくりへの情熱が、このベビーシューズに込められているのです。
ベビー用レザーシューズはどれくらいの年齢のお子様に最適なのでしょうか。手島さんにうかがってみたところ、「ファーストシューズにおすすめです。0歳から1歳半くらいまで、歩く前から歩き始めるまでの赤ちゃんで、靴のサイズは11〜13cmを目安にしてください」と教えていただきました。
赤ちゃんへのプレゼントやギフトとして購入する際に最も気をつけるべき点は、サイズやカラーです。カラーバリエーションは、アオ、オリーヴ、アカ、キャメル。皮革の美しさを最大限に引き立たせる、落ち着いた色合いの4色展開です。子どもの足のサイズにあった靴や、その子のイメージやお洋服にぴったりのカラーの靴を選んであげたいですね。 ベビー用レザーシューズは、ものづくりが好きな方や一般的な流通商品に飽きた方、知育を行いたいご家庭にもおすすめです。赤ちゃんの靴に上質なレザーを用いることは珍しく、贈られた子どもたちにとって特別な記念品になるでしょう。ひとつひとつ丁寧に仕上げられた本革の靴は経年変化も楽しめるため、思い出に残る最高のプレゼントになるでしょう。「こんなに小さかったんだよ」と、生まれた頃のエピソードを聞かせてあげたくなる魅力的なアイテムです。
手島さんの未来のビジョンは、ベビー用レザーシューズだけでなく、現在手がけている革のオーダースニーカーを軌道に乗せること。サステナブルな革靴の良さを知るだけでなく、実際にオーダーして身につけ使い続けることで、私たちはより身近に地球環境に貢献できます。そしてその想いは、これからの持続可能な世界を担う子どもたちへと引き継がれていくでしょう。 浅草は外国人観光客に人気の街ですが、手島さんは海外市場への展開にもチャレンジしたいと期待を抱いています。メイド・イン・ジャパンのクオリティや、手作りの革靴のぬくもりなど、いかにして海外にその魅力を届けるかが、これからの大きな課題です。
「多くの人々に履いてもらい、革の魅力を小さい頃から感じてほしい。そして、革靴を好きになってほしい」と手島さんは語ります。赤ちゃんがこの世に生まれ人生で初めて足を通す靴が、心を込めた手作業で作られた革靴であれば、それは家族の宝物となり、子どもにとっても忘れられない記念品となるでしょう。その子が成長し、自分のファーストシューズを知ったとき、贈り主の計り知れない愛情を強く感じるはずです。
アパレル業界出身の旅を愛するライターです。ドバイ在住歴2年。ブラジル、ヨルダン、トルコ、ドイツ、タイ、インドネシアなど様々な国を旅しました。ファッションデザイン専門学校を卒業し、アパレル会社の企画営業として培った経験を生かし、モノづくりの素晴らしさや地域の魅力を伝えます。
from : 東京都
ファーストシューズに最適な、赤ちゃん用の革靴。子どもの足や肌に優しい、サステナブルな革の素材を使用し、ひとつひとつ手作業で丁寧に作られています。柔軟な底の作りは、足の発育をサポートし、赤ちゃんの初めての一歩を大切に守ります。色は、アオ、オリーヴ、アカ、キャメルの4色展開。一生の思い出に残るレザーシューズです。
writer : 大中 亨佑 from : 兵庫県伊丹市
2024.9.5
writer : ヨシムラ ケイコ from : 東京都
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2023.11.15
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