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兵庫県の南部に位置する加古川市。ここが国内有数の靴下の産地だということをご存じでしょうか? 温暖で雨が少ない特性を生かし、古くから木綿の生産がさかんだったこの地域。明治期には家内工業として靴下を作る農家が増え、地場産業としての基盤が出来上がったのだそうです。 時代の変化とともに、大手アパレルメーカーなどではコストの安い海外に靴下の製造拠点を移すようになっていきました。そのような逆風の中でも加古川市内には多くの靴下工場が残っていて、国産ならではの質の高さを武器に、さまざまな商品を売り出しています。 「安価な海外製品と価格で競争していては食べていけません。だから、付加価値の高い商品を自社で開発していく必要があったんです」 そう語るのは、加古川市の志方町に本社を構える株式会社ユニバルの代表・横山裕司さんです。
ユニバルは、加古川市で70年以上も靴下作りを続けてきたキンキ産業株式会社が立ち上げたグループ会社です。時代とともに多様化する消費者ニーズを背景として、商品開発や販売部門を強化するために誕生しました。 大手スポーツブランドなどのOEM(製造委託)を長年にわたって請け負いながら磨いてきた技術を生かし、足首を固定して足への負担を減らすテーピングソックスなどの機能性靴下を中心に手掛けています。 そんなユニバルが始めた新たな挑戦。それが、2018年から売り出している自社ブランドの「IDATEN」です。 仏教における走りの神様・韋駄天にあやかったブランド名の通り、「走る」をサポートするランニングソックスを主力アイテムとして展開しています。 IDATENソックスの最大の特長は、「裸足のようなフィット感」です。横山さんは「テーピングソックスは私たちの定番商品の一つですが、お客様によっては締め付けが強すぎるという声もありました。そこで、さらに一歩踏み込んだ改良ができないかと新商品の開発に乗り出したんです」と振り返ります。 履き心地と機能性を追求し、加古川という伝統産地で研鑽してきた職人技。そして、そこから生まれた新しい発想。IDATENのアイテムには、ユニバルが紡いできたさまざまな思いや努力が込められています。
IDATENソックスを手に取ると、まず目が行くのが特徴的なデザインです。足首から土踏まずの部分にかけて、六角形が規則正しく整列する「亀甲柄」があしらわれています。 この六角形こそが、IDATENソックスの機能性を生む秘密です。亀甲柄の部分をよく見ると、単なるプリントではなく、編み目そのものが六角形になっていることが分かります。 六角形の編み目一つひとつが伸縮性のある糸で編まれていて、縦・横・斜めの六方向に伸び縮みする構造になっているのです。この六角形の集合体が衝撃を六方向に分散させつつ、足の動きに合わせて立体的にフィットするため、締め付けすぎずに程よいホールド感を生んでいるのだそうです。
これが、ユニバルが独自に開発して特許を取得した「ハニカム編み構造」によるテーピング。ちなみに、ハニカムとは蜂の巣を意味します。 実は、ハニカムテーピングの誕生には意外な裏話も。というのも、当初は韋駄天をイメージした和風のデザインとして、たまたま亀甲柄が選ばれただけだったそうです。とある職人さんがそれを見て、六角形という共通点からハニカム構造を取り入れるアイデアを思いついたのが始まりでした。 偶然の一致から生まれた新発想を形にできたのは、これまで磨いてきたノウハウや技術力があったからこそ。さらに、プロの陸上選手にも監修の協力を仰いで改良を重ね、ついにIDATENのデビューに至りました。 現在は、ノーマルタイプに加えて足袋タイプや五本指タイプもラインナップ。ランニングソックスの他に、ユニバルが得意とする着圧技術を生かしたサポーターなども展開中です。
ユニバルの工場をのぞいてみると、たくさんの編み機がずらりと並んでいます。機種や針の数などはさまざまで、編み機によって作れる靴下が違うそうです。 原料となる繊維も千差万別です。ウールや綿、絹、麻のような天然繊維から、ナイロンやポリエステルのような合成繊維までさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。 足元の肌にじかに触れ、歩きやすさや走りやすさに関わる靴下だからこそ、素材や編み方がとても重要なのは言うまでもありません。作る製品に合わせてベストな繊維や編み機を選定することで、履き心地がよく、機能性も高い靴下が生み出されていきます。 例えばIDATENソックスの場合、汗をしっかりと吸収しつつ、ムレによる不快感をできる限り緩和できるような素材を採用しています。 また、滑り止めの部分は、繊維そのものに滑り止め効果のある特殊な糸で編みこんでいます。靴下の滑り止めといえばシリコンを貼り付ける例が多いですが、走っているうちにその凹凸感が気になってしまうランナーも少なくないそう。 横山さんは「滑り止め効果のある糸なので、とにかく摩擦が大きいんです。試作段階では編んでいる途中で糸が切れてしまうこともたびたびありました」と開発の苦労を語ります。
原料と編み機を選定したら、いよいよ靴下作りのスタートです。製造中は、経験豊富な職人さんたちの目と手によって、編みのヨレやほつれがないか何度もチェック。製造途中の編み機を一旦停止して確認するほどの徹底ぶりです。 こうして編み機から出てきた靴下は筒のような形をしているため、専用のミシンでつま先部分をていねいに縫っていきます。その後、光棒という道具に靴下を通し、光に透かしながら穴あきなどがないか検品。最後に蒸気の力でしわを伸ばしながら形を固定し、靴下が出来上がります。 真剣なまなざしで靴下作りに励む職人さんたちからは、創業当時から受け継がれてきた品質への飽くなきこだわり、そしてものづくりへの誠実さが伝わってきます。
販売開始以来、マラソン愛好家の中でじわじわと認知度を広げてきたIDATEN。その存在が注目される大きなきっかけとなったのが、箱根駅伝の「三代目山の神」として知られる神野大地選手とのコラボでした。 「神野選手がIDATENを愛用していることをSNS経由で知ったんです。当時はまだ大きく宣伝していなかったので、商品を知っていただいていたことに驚きました。もう、すごいことですよね」と横山さんは笑顔を見せます。 神野選手が立ち上げたスポーツギアブランド「RETO」とのコラボは、さらに多くのファンの心をつかむ追い風となりました。そこで、ユニバルも本腰を入れてPRを強化。2024年には東京のビッグサイトで開催された東京マラソンEXPOに初めて出展しました。 横山さんは「地道な活動かもしれませんが、これからも機会があればイベントなどに出展してIDATENの魅力を広めていきたいですね」と意気込みます。 IDATENが生んだつながりはこれだけではありません。なんと、京都の禅寺「萬福寺」とのコラボも実現しました。一見無関係に思える両者ですが、萬福寺が韋駄天像を祀っているのを縁に、SNSでの交流が始まったそうです。 そんな萬福寺のお坊さんたちが2024年2月、京都の冬の風物詩ともいわれる「JR京都駅ビル大階段駈け上がり大会」にエントリー。ユニバルはIDATENのランニングソックスを提供し、萬福寺のチームを足元からサポートしました。 SNSの力も借りながら、陸上関係者もそれ以外も含めて広がっていくIDATENの輪。これからも、きっと素敵な縁が生まれていくに違いありません。
ユニバルとはどんな会社なのか? その問いに、横山さんは「皆さんの『歩く』を推進する会社です」と答えてくれました。 歩くことは、老若男女問わず手軽にできる健康法です。IDATENは今のところランニングのサポートアイテムとして打ち出していますが、いずれはウォーキングにも展開していきたいと考えているそうです。 横山さんのお話の中で繰り返し登場したのが、「健康は足元から」というキーワードでした。歩いたり、走ったり、スポーツをしたり、立ち仕事をしたり…。日々たくさん働く足に身につける靴下だからこそ、機能性にこだわりたい。そんな思いが伝わってくるようです。 「履いた人が一歩足を踏み出せる、そんなお手伝いができればいいですね」と語る横山さん。その表情からは、靴下作りへの誇りと情熱がひしひしと感じられました。
当たり前に「ある」ものは、なぜ「ある」のだろう。という疑問から、東洋思想や禅に興味を持ち始め、最近では座禅会に通っています。「当たり前に使っているモノは、つくる方の思いが実体になっている。」忘れがちなことを再確認できるような文章を執筆していきます。
from : 兵庫県伊丹市
ハニカムテーピングソックスとカーフサポーターのセットです。ハニカムテーピングソックスは独自の「ハニカム編み構造」により、足の動きに合わせて立体的にフィット。軽やかな履き心地ながら、しっかりとしたホールド感も備えます。土踏まずを支えて着地をサポートする「ストロングアーチアップ」などの工夫も施されています。カーフサポーターには、ふくらはぎを重点的に加圧して筋肉のブレを抑える「バックプレス製法」など、ユニバル自慢の着圧技術を採用。運動時はもちろん、立ち仕事や長時間の移動などにもおすすめです。
writer : 大中 亨佑 from : 兵庫県伊丹市
2024.9.5
writer : ヨシムラ ケイコ from : 東京都
writer : 水谷 陽平 from : 埼玉県飯能市
2023.11.15
writer : 東矢 咲 from : 滋賀県草津市
2023.9.8
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