【会津本郷焼】窯元の個性がきらり 伝統と革新を両立する美しい陶磁器【福島県 大沼郡会津美里町】

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緑の山々と広大な畑が壮観な美しいまち

2005年に「会津高田町」「会津本郷町」「新鶴村」の旧3町村が合併して誕生した、福島県大沼郡の「会津美里町」。それぞれの地域ごとに異なる歴史や文化をもつ小さなまちです。
緑が美しい山間地と、広大な畑がひろがる平野部によってできているこのまちは、昔から豊かな土壌と良質な水に恵まれてきました。そのため、野菜や果物の特産品が豊富なのです。
高級ワインに使われていることでも知られる「シャルドネ」という葡萄も生産されており、町内にはワイナリーも。
歴史の趣を感じる観光地も多数あり、たとえば東北屈指ともよばれる戦国の名城「向羽黒山城跡」や、美しい三層閣とダイナミックさに目を奪われる「左下り観音堂」、夫婦円満や商売繁盛のご利益がある「伊佐須美神社」などが有名となっています。
そんな会津美里町には、400年以上もの歴史を誇る伝統的工芸品「会津本郷焼」があるのです。

会津美里町の歴史ある工芸品「会津本郷焼」

「会津本郷焼」とは、福島県大沼郡の旧会津本郷町(現在の会津美里町)及びその周辺地域で生産された陶磁器製の工芸品の総称で、現地では「本郷焼き」とも呼ばれています。
陶磁器の工房である「窯元」は現在12箇所あり、作風や方向性、考え方などが実に多種多様。それだけ個性豊かな作品たちを一律に「会津本郷焼き」と称しているのは、この希少な産地を後世に残していこうと、それぞれの窯元が手を取り合っているからなのだとか。
胸を打たれるお話です。
会津本郷焼には、土でできた「陶器」と石を原料にした「磁器」があり、これらが同時につくられていること自体が非常に珍しいことなのだそう。
主に、食器類や土瓶、箸置きやスプーン置き、花瓶、香炉など、身近な生活用品がつくられています。
現在は、時代に合った作品づくりが模索されていて、陶磁器のかけらを使ったアクセサリーを制作したり、釉薬の色を工夫したりとさまざまな試みがなされています。

東北最古の窯場といわれる会津本郷の歴史

会津本郷焼のルーツは、安土桃山時代にまで遡ります。
1593年、会津若松城主である蒲生氏郷が、若松城の屋根を瓦葺きに改修すべく、播磨国(現在の兵庫県)から瓦工を招き、黒瓦を焼いたのが発祥とされています。
1645年には、会津松平藩祖である保科正之が、尾張国(現在の愛知県あたり)の陶工を雇入れ、本格的な陶器づくりが始まりました。
その後、藩の支援を受けて、この産業はますます発展。全盛期には100を超える窯元が存在していたほどです。
しかし、そんな状況もつかの間、1868年に始まった戊辰戦争により陶工たちは戦へ赴き、製陶工場も戦火に見舞われてしまいます。
一時は再起不能になったものの、一丸となった陶工たちにより復興され、後の世につながってゆくのです。
そして1993年、長い歴史と実績が認められ、ついに会津本郷焼は経済産業省(旧:通商産業省)に伝統的工芸品として指定されるまでに至りました。

熟練の技によって生み出される焼き物

つくる作品や窯元の考えによって、さまざまな工程がある会津本郷焼。
我々がイメージする陶芸のような「ろくろ成形」のほかにも「手ひねり成形」や「たたら成形」など、趣向を凝らしてつくられています。
たとえばろくろ成形では、まず土を板に乗せてろくろを回転させ、穴をつくるように手で土を寄せます。
陶器の底をつくりながら徐々に輪郭を整え、全体的に形ができたらワイヤーで外して乾かしてゆくのです。
土に硬さが出たらカンナで削りながら微調整し、再び乾かす工程へ。
完全に乾いたら釉薬をかけ、じっくり釜で焼成してゆきます。
その後、割れないよう慎重に冷まして完成……といった工程が。まさに熟練の技が必要なのです。
かつてこの地域では焼成に「登り窯」が使われていましたが、石炭や石油、ガスを用いる釜の台頭により、ほとんどが失われることに。
現在町内で稼働しているのは宗像窯の「登り窯」のみで、貴重な文化財となっているのです。

会津本郷焼の魅力を、その手で体感して

会津本郷焼の窯元のなかには、制作体験を実施しているところも。絵付け・手びねり・ろくろでの成形などが体験でき、焼き上がり後は発送して貰うことも可能なので、一度体験してみると良いでしょう。
詳細の問い合わせは、「会津美里町観光協会」へ。
また、会津本郷焼を実際に見てみたい方は、「会津本郷陶磁器会館」へ足を運んでみて。
現在活躍している12の窯元の個性豊かな作品を展示・販売していますので、あなたのお気に入りが見つかるかもしれません。
遠方の方は、会津本郷焼事業協同組合が運営・販売を行うオフィシャルオンラインショップを訪問してみましょう。美しい作品たちが数多く並び、購入も可能となっています。
歴史を感じる趣と現代の美的感覚を見事に両立し、複数の窯元が個性豊かな陶磁器を展開する会津本郷焼。ぜひあなたも、その手にとってみてください。

紡ぎ手:Sayuri Shirasawa

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