【萩焼】土がもたらす “やわらかさ” と職人の “やさしさ” 【山口県 萩市】

INDEX

INDEX

萩焼の魅力は “土” の魅力

山口県北部、日本海に面し三方を山に囲まれた山口県萩市。
古くから茶人に愛されてきた “萩焼” が長らく伝承されてきた地です。
萩焼の茶碗を手にすると、しっとりとやわらかい肌ざわりがします。
そして、手に感じるどっしりとした土の質感が特徴です。
土肌と釉薬(ゆうやく)の絶妙なバランスが保たれ、絵付けがほとんどなされないため素朴で造形美にあふれています。
萩焼の魅力は、まさに “土” の魅力です。
“侘び寂び” の世界を体現したかのような感性で茶人に愛され、茶物を中心として発展してきました。
萩焼は茶事には欠かせない道具として今も昔も重用されています。

はじまりは2人の陶工から

萩焼はおよそ400年前に起こりました。
豊臣秀吉による文禄・慶長の役の時、2人の兄弟の陶工が日本へ連れられてきて、安芸の毛利輝元に預けられました。
関ヶ原の戦いの後、毛利家は周防・防府に領地が移され、萩に城を構えました。
その萩城下で窯を開いたことが萩焼の始まりとなりました。
最初は李朝風だった作風も、織部焼や楽焼など様々な作風が加わって多様化していき、現在の萩焼のかたちがつくられてきました。

萩の七化けが醸す “侘び寂び”

萩焼は「萩の七化け(ななばけ)」と言われます。
使い込むほどに茶などが器に染み込み、色や艶が微妙に変化していきます。
その変化していく風情を茶人は “侘び” として珍重してきました。
萩の七化けは、土の性質や手早く焼き上げる萩焼ならではの手法によって起こります。
萩焼の原土は粘り気が少なく、浸透性があります。
やわらかく焼き上げるため吸水性があり、そのため使い込んでいくうちに茶などが染み込み表情が変化していくのです。

職人の命である萩焼の “土”

萩焼に使われる土は3種類あります。
防府付近で採れる大道土(だいどうづち)、萩市近郊の金峯土(みたけつち)、萩沖の島から採れる見島土(みしまつち)です。
大道土は砂礫混じりの青白色の土で、細かく砕いてふるいにかけ、それを水に溶かして漉し、上澄みをとって粘土としたものを使います。
上澄みの粘土でつくると表面がなめらかな “姫萩(ひめはぎ)” となり、漉した時に残った砂を混ぜるとざらっとしたした肌の “鬼萩(おにはぎ)” になります。
金峯土は黄白色のざらざらとした粘土の一種で、見島土は赤黒色の火山系の土です。
大道土の中に金峯土を混ぜ、見島土を少量加える配合が主流ですが、土の調合は陶工によって異なります。

萩焼の “やわらかさ” と “やさしさ”

萩焼の土は職人の命であり、購入・保管・調合・水漉し・乾燥と一から十まで職人自らの手で行われます。
萩焼は土を寝かせません。
土を寝かせておくと臭いが出たり熱に弱くなってしまうそうです。
土は必要な分だけつくられ、つくるものに適したやわらかさになるまでもみ込まれていきます。
萩焼は、土づくりから乾燥、成形、焼成まで一気に手早くつくられます。
職人は「萩焼は、やわらかくて、もろい」と言います。
だからこそ、土づくりから焼成に至るまでその工程全てにおいて “やさしく” つくりあげられていきます。

現代の職人が生み出す多種多様な萩焼

静かな時の流れる萩のまち。
戦後10軒ほどであった萩焼の窯元も、現在では100軒近くの窯元があります。
萩焼の魅力そのままに、職人によって多種多様な趣をもった逸品がたくさん生まれています。
萩市観光協会公式サイトでは、多くの窯元が紹介されています。
オンラインショップがある窯元、萩焼体験ができる窯元も多数ありますので是非アクセスしてみてください。
萩焼はその1つ1つが違った表情をもち、手触り口触りにも違いがあります。
お気に入りの萩焼に出会えたら、使い込むほどに変化するその魅力もまた、感じてください。

一覧 一覧