【真壁石燈籠】優美と堅牢を極める職人技が息づく伝統【茨城県 桜川市】

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茨城県桜川市の真壁石燈籠

山の景色と里山の光景が織りなす自然美が魅力的な茨城県桜川市は、国内有数の高品質な石材の産地として知られています。市内のいたるところに「石」の看板が立ち並び、そのなかでもひときわ古い歴史をもつのが真壁石燈籠です。
真壁石燈籠は、機械仕上げでは表現できない細かな表情と美しい造形が特徴です。職人たちの熟練した技法によって作りだされる石燈籠は、庭園や寺社の装飾品として広く利用されてきました。
桜川市の風景と調和しながら佇む真壁石燈籠は、石の冷たさとは対照的に、温かみを感じさせてくれます。
桜川市の街並みにいっそうの趣を加えていることでしょう。

室町時代から続く真壁石燈籠の歴史

真壁石燈籠の歴史は、室町時代末期にまで遡ります。
当時、地域全体で仏石作りが盛んになり、五輪塔や古碑などが手がけられました。
江戸時代に入ると、常夜燈として石燈籠が数多くの寺社に設置され、その美しさと実用性で広く知られるようになります。
現存する最古の石燈籠は、1824年(文政7年)に作られたもので、真壁町の寺院に大切に保存されています。
石工たちは長い年月をかけて技術を磨き、江戸時代末期には名匠・久保田吉兵衛によって伝統技法が確立されました。
昭和時代に入ると、造園ブームの影響もあり、真壁石燈籠の需要は全国的に高まります。そうして、産地としての地位を確立していったのです。
時代の流れとともに、石の利用はますます盛んになり、平成7年には石匠たちのたゆまぬ努力が実を結び、真壁石燈籠は国の伝統工芸品として認められました。
その美しさと歴史、そして職人たちの技と魂が織りなす真壁石燈籠は、今もなお多くの人の心を魅了し続けています。

流麗なる石の芸術

真壁石燈籠の最大の特徴は、繊細で優美な彫刻と堅牢な構造が見事に調和した美しさにあります。
この真壁石の原材料は、60万年前に形成されたとされる花崗岩です。
真壁石は主に加波山から採取され、その特性として目が揃っていること、変色やつや落ちがないこと、水分が上がらないことなどが挙げられます。墓石としても重宝されており、格調の高さとやすらぎを与えてくれます。
高い品質のため、細部まで緻密な彫刻が可能となり、真壁石燈籠には花や動物のモチーフが美しく表現されるのです。
一つひとつの石燈籠は、日本庭園に合わせて手彫りで作られています。重厚でありながら繊細な趣は、見るものを魅了するでしょう。
時間の経過とともに石燈籠が苔に覆われ、日本庭園の風景に溶け込むことで、さらに優雅さが引きたちます。

匠の技が光る真壁石燈籠の制作工程

真壁石燈籠の制作には、高度な技術と長年の経験が求められます。そのため、この伝統技術は厳しい弟子相伝によって継承されてきました。
職人たちは「のみ」「こやすけ」「びしゃん」といった伝統的な工具を駆使し、石を一つひとつ手作業で仕上げます。
石を切り出す段階から、彫刻、組み立てまで、歴史のなかで培われた18もの技法を用いて、制作が進められるのです。
宝珠、笠、火袋、受、竿、地輪の6つの部分をそれぞれ丹念に仕上げ、最後に積み上げて完成となります。
職人は石と対話しながら、長い時間をかけて掘り続けます。冷たく硬い石がやわらかく温かみのある印象に仕上がるさまは、技術の結晶といえるでしょう。
石の特性を深く理解し、伝統工具と卓越した技術を駆使して作り上げる真壁石燈籠は、単なる工芸品ではなく、時を超えた芸術品です。その美しさと精密さは、真壁の職人たちの魂と誇りを映しだしています。

街全体が輝く真壁石燈籠の祭り

真壁石燈籠の現代的価値を再発見してもらうため「真壁の夜祭り」「真壁のひな祭り」「真壁石燈籠フェア」「いばらきストーンフェスティバル」など、さまざまなイベントが開催されています。
石の町、桜川市真壁町は、江戸時代初期に築かれた古い蔵や門などが並び、歴史の趣を感じさせる街並みが広がっています。
その街全体が燈籠の光に包まれる夜のライトアップは、まさに幻想的な光景です。
多くの観光客がこの美しい光景を求めて訪れ、真壁町は賑わいを見せています。
真壁石燈籠の温かみのある光が作りだす雰囲気は、訪れたものの心に深く刻まれることでしょう。

石匠たちの魂が宿る真壁石燈籠の世界

真壁石燈籠は、その優美さと堅牢さから日本各地で愛されてきました。
その背景は、長い歴史のなかで培われた、石匠たちの卓越した技術の賜物といえるでしょう。
真壁石燈籠の伝統工芸士になるには、一定の実務経験のあと知識試験と実技試験での合格が必要です。
現在、真壁石材協同組合では16名の伝統工芸士が登録され、その技が受け継がれています。
真壁石燈籠の魅力を多くの人に知ってもらうために「真壁石燈籠フェア」などのイベントのほか、採掘場見学や、石仏制作体験なども不定期で開催されています。
訪れる人々に貴重な体験の機会を提供していますので、桜川市を訪れた際は、真壁石燈籠の魅力を直に感じてみてください。

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