【宮城伝統こけし】時代を超えて愛される、可憐な和ドール【宮城県 仙台市】

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杜の都、仙台市のお土産品

仙台藩初代藩主の戦国武将、伊達政宗が活躍した地としておなじみの宮城県。
西には、蔵王や栗駒をはじめとした山々が、東には松尾芭蕉の句で有名な松島があります。
中央部に位置する仙台市は、東北地方で唯一の政令指定都市として多くの人が行き交うまち。近代的な町並みのなかには美しい自然の姿もあり、「杜の都」としてもお馴染みです。
大きな水槽で魚たちが楽しそうに泳ぐ「仙台うみの杜水族館」や、レトロな外観が美しい「ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸溜所」など、一度は立ち寄りたい有名な観光地もあります。
そんな宮城県では、お土産にぴったりの工芸品「宮城伝統こけし」が有名なのはご存知でしょうか。産地によって「鳴子こけし」「遠刈田こけし」「弥治郎こけし」「作並こけし」「肘折こけし」の5系統に大別され、それぞれ違った個性を持つ可愛らしい木製人形です。

「宮城伝統こけし」ができるまで

今は「こけし」という呼称に馴染みがありますが、発祥当時は「きでこ」「こげす」等さまざまな呼称があり、全国的に統一された経緯があります。
なかでも宮城伝統こけしは、1981年に経済産業大臣に指定された「伝統的工芸品」。
原材料にミズキやイタヤカエデといった木が使われ、ひとつひとつ手作業で作られてきました。
制作は、まず原木を伐採して枝を落とすところから始まり、約半年ほど乾燥させてから形をつくっていきます。
用材をカットして粗めに削り出す「木取り(玉取り)」や、ロクロに取り付けてカンナでおおよその形に削り出す「粗挽き」を経て、バンカキや紙やすりを用いて磨き上げる「仕上挽き」が行われます。
本体ができたら、その後は「描彩」の工程。黒・赤・緑といった伝統的な色彩で、絵柄や顔を描いていきます。シンプルな構造だからこそ、表情の描彩にはこだわりが込められているのです。

人形として愛でられてきた伝統こけし

宮城伝統こけしを作る職人たちは、とくに「工人(こうじん)」と呼ばれ、古くからの技術を伝承してきました。
歴史を遡ると、発祥は江戸末期頃。もともとは木製品を作る職人が端材で人形を作り、子供たちへのお土産品として温泉地で売ったことがこけしの始まりというのが通説です。
東北地方には昔から温泉地が数多くあり、その発展と共にこけし作りも盛んになった歴史があるとされています。
今でこそ、価値のある工芸品として大人がコレクトしている印象がありますが、実は本来は女の子たちの玩具でした。
現代の女の子がメルちゃん人形やリカちゃん人形で遊ぶように、当時の少女たちもこけしと一緒におままごと遊びを楽しんでいたのです。
時が流れた現代でも、その素朴で愛らしい見た目は、多くの女性を惹きつけてやみません。

世界に羽ばたくKOKESHI DOLL

宮城の工人さんが作るこけしは、「全日本こけしコンクール」という規模の大きな大会でも、毎回数多くの受賞を果たしています。
トラディショナルなデザインのイメージがあるかもしれませんが、昨今は鮮やかなカラーでイラストのような絵柄が描かれた現代風の「創作こけし」や、量産ができる「新型こけし」も登場しているのです。
国内では、2010年頃から第三次こけしブームが始まったといわれており、「こけ女(こけし女子の略)」と呼ばれるファンの女性もあらわれました。
東北にも足を運んで、一点ものの宮城伝統こけしを探しているなど、ひそかに賑わいを見せているのです。
加えて、インターネットの動画サイトや通販サイトが拡大してきた影響もあり、こけしは海外でも「KOKESHI DOLL」として、注目を浴びるまでに。
さまざまなデザインのこけしを見たい方は、みやぎ蔵王こけし館のオンラインショップを覗いてみましょう。

こけしファンが集う「全国こけし祭り」

毎年9月の初頭には、3日間にわたって「全国こけし祭り」が開催されます。1948年頃からはじまったとされ、宮城県の鳴子温泉地域が賑わう大きなお祭りとなっているのです。
日本各地の伝統こけしが集まり、供養祭や奉納式、各産地ごとの制作実演、そして展示販売も。
全国からファンが集い、こけしの魅力をたっぷりと楽しめるので、一度足を運んでみると良いでしょう。
また、宮城県に観光で訪れた際には、大崎市鳴子地区にある「日本こけし館」や、蔵王町にある「みやぎ蔵王こけし館」、白石市の「弥治郎こけし村」にも立ち寄ってみましょう。さまざまな系統の伝統こけしや、資料の展示を見学することができますよ。
それぞれの施設でこけしの絵付け体験も実施していますので、ぜひ挑戦してみてください。

こけし工人たちの技をこの目で見て

県内の系統ごとに、描かれている表情や胴体部分の華やかな文様にも個性がある、宮城伝統こけし。
伝統工芸品への理解を深める学習の一環として、宮城県白石市の小学校でも、毎年こけしの絵付け体験が行われているそう。
その様子がニュースになったり、観光地で体験できる場所が多くあったりと、宮城県では、今でも生活のなかに伝統こけしが息づいているのです。
工人さんが手作業で作っているのを実際に体感することで、一体一体の伝統こけしが、より愛らしく感じられることでしょう。
あなたもぜひ実際に絵付け体験をして、その姿を愛でてあげてください。わたしたちの目を楽しませてくれる宮城伝統こけしの愛らしさに、改めて気付けるはずです。

紡ぎ手:Sayuri Shirasawa

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